チャットボットはメディアの未来か? 「レスポンス」に導入した担当者に聞く

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イードが運営するクルマ情報サイト「レスポンス」は、自動車に特化したニュースサイトとしては日本最大規模を誇り、日々多くのユーザーにPCやスマートフォンで閲覧いただいています。このレスポンスで2016年からスタートしたのが、Facebook Messengerのチャットボットによる情報発信です。一般生活でもビジネスシーンでもチャットの存在感が増す中で、新しい情報発信の形としてのチャレンジですが、どのように導入し、どのような成果を上げたのか、担当者に聞きました。

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※本記事は、チャットボット導入に際してのパートナー企業で、現在はチャットボットソリューションとして fanp を提供している株式会社ZEALS様によって実施され、同社サイトに掲載されたインタビューを転載したものです

fanp の可能性を信じ、先行投資

―――まずは、fanpの導入までの経緯について教えてください。

当時、レスポンスではメルマガはやっていたもののファンを囲っていると言えるものがこれといってありませんでした。

編集部にジョインした当初はアプリでの展開を検討していたのですが、既に他社のメディアはアプリ化が進み、コモディティ化しており、またアプリを作るとなると保守・運用費、そして広告宣伝費もかかるため気軽に始められないといった状況で他に何か新しいこと、面白い取り組みができないかと模索していました。

そんな時に ZEALS さんに出会い、BOT TREE(現 fanp )を紹介いただきました。 Facebook Messenger ならすぐ始められ、国内で同様の事例も少なく、アプリで展開するよりもブルーオーシャンだったため可能性があると感じ取り組みを決めました。

正直、上手くいく確証があったわけではなかったですが、面白い取り組みにできるのではないかと期待して先行投資で始めました。

 ―――実際に導入してみてどうでしたか。

いざやってみると方向性が違うということに気付きましたね。

当初の目的はトラフィックを集めることでした。Facebook の Instant Article に集客することで、メディアの分散化にも対応し、本紙よりも速く記事を表示させることで、メルマガとは違うユーザー体験を生み出せるのではないかと考えたのです。もちろんそこでの広告収入をKPIとしました。ところが、想定よりも獲得に苦労したため、なかなか上手くはいきませんでした。

今の時代に爆発的なトラフィックを生ませるのはそう簡単ではないですからね。

求めていたものが”トラフィック”だったために最初の一ヶ月は、正直苦しかったです。

ファンの顔が嫌でも見えるサービス

―――なぜ継続をしていただいたのですか。

fanp はユーザの顔が嫌でも見えちゃうサービスなんですよね(笑)。

今までの解析ツールではユーザーの顔がこんなにリアルに見られなかったのに対し、fanp は毎日記事を見てくれているユーザーの顔が一人一人見られるんですよ。

全体のPVに比べると正直そんなに高い数値が出ていたわけではなかったですが、非常に良いコアなユーザー、つまり“ファン”がいると辞められなくなりました。。毎日毎日夜中でも見てくれてるのに、辞めるという選択肢は有りえなかったです。愛用してくれる人が少なからずいるのに、急に辞めるというのはユーザーに対する裏切りだなと。

長く続けていく中で、アクティブ率やアクション率などの数値も安定してきて、また bot に話しかけてくれるすごい熱量を持ったファンたちが現れ、これは新たな面白い取り組みになるのではないかと可能性を感じ、継続を決めました。

―――fanp 導入後もメルマガもやっているのはなぜですか。

メルマガにはメルマガのフォーマットがあり、17万人を超える会員の皆様にはそれが受け入れられていて、チャットマガジンにはチャットマガジンのフォーマットがあるものだと思っています。

つまり、fanp は完全にメルマガをリプレイスするものではなく、もっと手軽に見たい人や、既存のメルマガとは違う体験がしたいユーザーが使うものだと思います。

また、読者の中にはそれこそまだガラケーを使っている方もいらっしゃいます。Facebook Messenger だけにすると昔からガラケーでメルマガを愛読している方が見られなくなってしまうのも両方で展開する理由です。

Messenger マガジンの登録数はこの一年で約1万人のユーザーが登録してくださいましたが、メルマガの会員数も同じペースで純増しています。

つまり、Messenger マガジンを始めたからといってメルマガの新規会員登録数が減ったわけではないんですよね。どちらにも良い点があり、運営する側としては読者の方がより満足できる選択肢を多く提供することが使命ではないかと考えています。

―――どんな配信を行っていますか。

配信については、この1年間かなり試行錯誤しました。

結論から言うと、テキスト+カルーセル(記事)配信が一番ベストですね。
そして記事数は一度に配信できる最大の数の10記事を一気に送っています。

どういった配信方法で、何記事を送ると一番数値が高くなるのかを ZEALS さんにも協力してもらい AB テストを行った結果、この配信方法にたどり着きました。

この配信に慣れてから3記事で配信したりすると、ユーザーから「少ない」とか言われたりするんですよ(笑)

死ぬまでずっと記事を読んでくれるファン

―――これから fanp をどのように活用していきたいですか。

方向性としては、単純にトラフィックを集めるのではなく、いかにエンゲージメントが高い人を増やすか、エンゲージメントを深めるかと言うところをもっと突き詰めていきたいです。

今、メディアはPVだけを求めて運用していくことが難しい時代になってきています。
今後、釣りの見出しで人を集めたり、下世話なネタでバズを生むといったメディアはどんどん淘汰されていく時代になるのではないでしょうか?

いかにファンと呼べる読者がいるか、ファンをどれだけ喜ばせられるか、ファンをしっかり集めることが非常に重要になってきています。

我々のような専門媒体の価値は、有象無象のトラフィックを一時的に集めるだけではなく、いかにファンと呼べる読者がいるのか、ファンをどれだけ喜ばせられるコンテンツがあるのか、という本質的なところにあると思います。

レスポンスの Messenger マガジンに登録してくれてるユーザー、ファンは Facebook Messenger のプラットフォームが消えない限り、死ぬまでずっとレスポンスを読んでくれるファンだと思います。

今後メディアをやる上で重要なのはユーザーのロイヤリティ、エンゲージメントを高めることだと思っていて、500万PVでのビジネスモデルではなく、1万人に対してできるビジネスモデルを考えれば、マネタイズも可能だと思っています。

ユーザーを大量に増やしてマネタイズするのではなく、エンゲージメントを深めたユーザー、ファンを有料会員にするとか、もう1つコミュニケーション用のボットを別で作成し、有料にしたりといった新しいビジネスモデルを作っていきたいです。

―――これから始める人にアドバイスをお願いします!

fanp はエンゲージメントをKPIに置いているメディアであれば非常に相性が良いツールです。

メディアとしてPVを上げるのも大事ですが、ユーザーのニーズに応え、満足度を上げる、つまりエンゲージメントを上げることも同じくらい重要だと思ってます。

PVとエンゲージメントの2軸あるとしたらユーザーロイヤリティを高める、ユーザーの体験を向上するといったエンゲージメントを深める軸を高めたいなら導入するべきだと思います。

目に見えるトラフィック、PVを集めるといった既存のメディアのビジネスモデルでの目的で導入するのではなく、エンゲージメントを深めた先にある新しいビジネスモデルを見据えて導入するといいですね。

新しい見せ方ができる新規事業だということを上の人に認識させられると導入しやすいですね(笑)。

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